「青空1号」リリース記念インタビュー 第1回    (聞き手/カストル)
9月末日 世田谷公園にて
 
カ・ まずタイトルが「青空1号」ってのは。
覚・ もともと低血圧なので、気圧の低い曇天と台風にはめっぽう弱いんですよ。
朝起きて空が晴れていると、とりあえずそれだけで幸せになれちゃいますね。
青空は福の素ですね。
カ・ 「鬼の素」っていう物語詩がありますよね。
覚・ なんかの素っていうのが好きなのか。(笑)それと「アポロ13号」みたいなことを考えててふと浮かんだのが「青空1号」。
このね、意味なしの風合いがかなり気に入ってますね。
カ・ でも収録曲の歌詞見ると、「青空」という単語がよく出てきますよ。
覚・ 原風景だからねー。
カ・ それはつまり覚さんが空から来た生命体だと?
覚・ それは谷川さんですね。(笑)あのね、雨の日って涙と同じで歌になりそうでならないの。私に限ってかもしれないけど、明るければ明るいほど悲しみや切なさが深いって感じがずっとあるんですよ。
カ・ それは覚さんの作品の通奏低音になってる気がするな。
覚・ そう。そうなってしまってる。カストさん、さすがウォッチャーですね。
カ・ ありがとうございます。
ところで、作詞と詩の朗読を続けてきた覚さんが、なぜまたここへきて歌を歌うのか、と不思議がるひとは結構いると思うんですけど。
覚・ そうですよね。大学時代からライブハウスでバンド活動を続けていた私にとっては歌うということは詩の朗読と地続きで、特別なことじゃないんですけど。
「声に出す言葉」を追求するという意味では、詩の朗読より歴史は長いわけで。
カ・ でも歌のCDを出すってどことなく勇気要りません?
覚・ 要らなかったよ。さしあたってこの一枚だけは音楽家としてきちんとやろうというのはあった。
ただ自分の本当に好きな音楽っていうと、私の場合実はかなりストライクゾーンが狭いので・・・。
カ・ マニアックという意味ですか?
覚・ うーん、その言い方は難しいですね。でもライブ活動やっているとき聞きにきた友達に「これってジャンルはなんなの?」って言われて答えきれなかった。
当時流行はニューウェイブと呼ばれる音楽で、その枠の中には入ってたと思う。でもほんとはそれって何も説明してないのと同じでしょ。どうせ説明できないことしてるなら「ロックだぜ」って言っておこうとか。とにかく、ほかではあんまり聞けないようなことを真面目にやりたいと思って。
カ・ アルバムには「趣味がよくてキャッチーな山田耕作」みたいな曲もあるし、「ケルトの匂いのする舞曲」とか「中原淳一風聖歌」みたいなのもあるし。
覚・ フォーレみたいな和声感覚もいいでしょう? あーでも作曲家は「何々みたい」って言われるの、好まないだろうなあ。取り消し。こういうのって言葉で言いにくいんだ。
カ・ ま、ボクの印象ですから。

以下次号…

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